誰もが持つ可能性

 

 

初めての本格的なダイエットに成功したのは、高校2年生の3月。ある日鏡に映った自分の体型にゾッとして、慌てて始めたダイエット。今思い返すと、めちゃくちゃな方法だった。高価なダイエット食品を買えるわけでもなく、会員費のかかるジムに行けるわけでもない田舎の高校生がしていたのは、長風呂&夕食食べないダイエット。最初の一週間を炭水化物抜きにして、その後は夕飯をヨーグルトやスープだけにしたりして、結果的には8kgくらい落とした。痩せていくのはすごく快感だった。友達や親から「痩せた?」と聞かれ、どの服も前より似合うようになり、鏡の前に立つのも楽しくなる、そんな感じだった。

大変だったのはその後。食事量を減らして体重が落ちたんだから、元のように食べれば当然体重は戻っていく。いわゆるリバウンドというやつ。今までの努力を無駄にしないようにダイエット中と同じようなメニューで頑張った。

その年の夏、受験生だった私は、関西方面の大学を受けるため、祖母の家で過ごしていた。おばあちゃんといったら、どこの家も似たようなものかもしれないけれど、孫が来ると喜んで色々としてくれるもの。うちもそうで、私が長い間食べてなかった揚げ物やら、炭水化物やらをてんこ盛り出してくれた。本当は、私だって食べたいけれど欲望に任せたらこれまでの我慢が水の泡になる。「ダイエット中なんだ!」ってなるべく明るく断るようにして、何とか食べないようにしていた。

でも、毎回断り続けるわけにはいかなかった。前回会ったときよりだいぶ痩せていた孫を見て心配したおばあちゃんは、「いいから食べなさい」「もう充分痩せているから」といって食べさせてこようとした。(誓って言うけど、この時の私は客観的に痩せてはいなくてごく標準的な体重だった。)うちの祖母の場合、さらに「孫を預かっている」という責任感も上乗せされて、とにかくこれ以上痩せさせてはいけない、って思っていたんだと思う。いらないって言っているのに、食事のたびにご飯を炊いたり、コロッケを揚げたり、だんだん私は食事が苦痛になっていった。

食事の時間が近づくたび、「今日はどうやって断ろう」と考え「断り切れずに食べることになってしまったら、どうやってその分の体重を落とそう」そればかり。食事のたびに、しかめっ面で食べようとしない孫と、なんとか食べさせようと格闘する祖母。あの時の私には、祖母は私を太らせようと必死になっている敵でしかなかった。

ある日、この悩みを誰かわかってくれないだろうかと、ネットの掲示板を見ていたら「拒食症かもしれないからチェックしたほうがいいよ」とURLが貼ってあった。(まさか?だってまだこんなに太ってるのに?)そう思いながらチェックをしてみると、あてはまる項目だらけだった。診断結果は、摂食障害レベル「強」。私は、自分のことを楽天家だし、精神的なバランスもとれているし、客観的な視点をいつも持っていると思っていたから衝撃的な結果だった。だって、拒食症って、ガリガリの人がなる病気でしょ?って。でも、今だからわかるけどあの時の精神状態は異常だった。食べ物と体重に1日中支配されているなんておかしい。体は標準体重でも、心は摂食障害になりかけていた。

それからは、自分をもっと客観的に見るように努力して、少しずつ食事と体重への執着心を解いていったように思う。この記事を読んでくれた、あなたに伝えたいことは2つ。周りに摂食障害になりかけている人がいても無理やり食べさせようとしてはいけない。悪化する可能性を高めるだけだから。そしてもうひとつは、誰もが摂食障害になりうるってこと。自分のことを、ちゃんとしてるって思っている人でもね。