新しい現実に向き合うこと

今回、新しく生まれたZINIA Magazineに参加できることになって、とても嬉しいです。ちいさくてちっぽけなひとりの女の子として、この社会にひとりでただ立っていることにずっと不安を感じているし、社会や世間一般に広まっている価値観に対して感じている違和感や憤りを打ち明けて話せる場所が、(今のところ)わたしにはほとんどないからです。
わたしたち一人ひとりが、今まで誰かと共有することの難しいこと、小さな悩みや違和感を(もちろんすこしマニアックな本や映画、音楽のことも)語り合える場所になればいいなと思います。

ZINIA Magazineの生まれるきっかけとなったROOKIE MAGAZINEでは、自由で楽しくてかわいいヴィジュアルからは想像できないほど、たくさんの社会的、政治的な問題が個人レベルで誠実に、緻密に語られています。ROOKIEほど影響力のある、若い女の子たちの発信するメディアに、そういったことが語り合え、発言できる土壌があることをとても羨ましく思います。

ROOKIEが生まれた国アメリカでは、トランプ政権が誕生しました。選挙でトランプ氏が勝利したニュースを見たときの衝撃は忘れられません。そのあとの異様な空気も。わたしにとってさえこんなにショックだったのですから、アメリカに暮らす女の子たちの不安は計り知れないものだったと思います。トランプ氏勝利のあと、一晩空けてROOKIEには、選挙に関するデータ、これからすべきことについて簡潔に書かれた記事が投稿されました。

真っ黒な画像と「Where Do We Go From Here? Edition」というタイトルで、『バッド・フェミニスト』の著者、ロクサーヌ・ゲイの言葉が引用されています。

─Where do we go from here? That is the question many of us will be trying to answer for the next while. For now, we need to breathe, stand tall and adjust to this new reality as best we can.

「わたしたちはいったいどこへ向かうの?それが、わたしたちの多くが当分のあいだ直面する問いでしょう。とりあえず、深呼吸をして背筋を伸ばし、できる限りこの新しい現実に向き合いましょう(適応しましょう)。」

私たちの暮らす日本には外国のことなんか気にしていられないくらい、山ほどの問題があって(男女平等ランキングは世界111位だったり、奇妙な「女子力」という言葉が横行したり、不誠実な政治が慣習的に行われたり……)考えることさえ嫌になります。わたしたちは本当にどこへ向かうのでしょうか。

そして、自分の身にその一片が降りかかるたび、私たちは今まで見たこともない、厳しい現実と向き合わなくてはいけなくなります。

わたしは社会に出てすぐに、人間としての尊厳を傷つけられるひどい経験をしました。そしてそのことを勇気を出して打ち明けたとき、「社会ってそうゆうものだから」「君は22歳の女の子だから」という言葉で片付けられました。今でも思い出すと心が冷たくなります。本当に自分の身に起こっていることなのか信じられなくて、悔しくてどうしようもなくて、その現実と向き合うにはかなり時間がかかってしまいました。

それでも、尊敬する人たちの言葉や勇気ある行動に救われて、何とか現実との向き合い方を、自分の立ち位置を調整することができました。今では、自分には美しくて素晴らしいものを見つける力があるし、もしかしたら生み出す力も持っていると信じています。

わたしにとって羽化する(Incubation)というのは、そういった新しい現実に向き合い、順応することです。2年に一回か、半年に一回かはひとそれぞれですが。順応できたら、何か手を動かしたり、少しでも行動に移すこと。

このタイミングでZINIA Magazineが生まれることには、とても意味があるように思います。今までよりももっと強く女の子たちの力になって、お互いを支えあえる「強いつながり」とは言わないまでも、ゆるい「シェルター」のような場所はきっと必要だと思うんです。

厳しい現実と自分との距離を、向き合い方を調整できるようになるまで、絶望して悲しむ時間を少しでも短くできるように。女の子がひとりでも、背筋を伸ばして立っていられるように。そしてひとりひとりが、ここから始められるように。